JADEA 一般社団法人全国農業改良普及支援協会
サイト内検索
 
 
| English | Site Map |  
トップページ各種情報知的財産(農林水産分野知的財産人材育成総合事業)寄せられた質問と回答特許権・実用新案権に関する質問質問と回答
質問と回答
質問
 特許第3809475号「イチゴの株据置栽培方法」(2003/10/0出願、2006/06/02登録、広島県所有)について、高設栽培でイチゴの株を越年させるとすべてが侵害に当たるのかどうか内容を見る限りよくわかりません。個々の技術について、例えば、窒素中断等の明記されている技術体系なのでしょうか。それとも、高設の据え置き栽培全体なのでしょうか。
回答
 第3809475号特許公報に記載の特許請求の範囲を見る限り、高設栽培でイチゴの株を越年させるとすべてが侵害に当たるのかというと、そのようなことはありません。また、個々の技術(例えば、収穫終了後から花芽分化時まで窒素肥料の施用を中断する技術)のみを実施しても、特許権侵害ではありません。

 特許発明の保護範囲(技術的範囲)は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるのが原則です(特許法第70条第1項)。そして、特許発明は特許請求の範囲に記載された構成要件によって一体として構成されるものであるため、特許権侵害が成立するためには、構成要件のすべてを実施することが必要です。侵害態様が特許発明の構成要件を一部でも欠く場合には、特許権侵害は成立しません(技術的範囲を決めるのに、明細書や図面を参酌したり、公知技術を参酌したり、出願経過を参酌したりすることもありますが、あくまでも特許請求の範囲の文言によって特許発明の技術的範囲を決めるのが基本です)。

 然るに、本件の高設栽培でイチゴの株を越年させる場合、この特許請求の範囲に記載の栽培方法をそっくり利用する場合、例えば(1)〜(4)の処理工程をそっくり包含する栽培体系を繰り返して、同一株を多年に亘って利用する場合には、この方法特許を侵害するということにもなりますが、一部の工程のみを使用しても、あるいは、一部の工程を省いても、侵害にはなりません。

 しかしながら、実際のところはどうなのでしょうか。高設栽培でイチゴの株を越年させ、そのまま据え置いて栽培する場合には、このような工程でイチゴ栽培を繰り返すのが今のところ労力面や収穫面で最も優れた方法なのではないでしょうか。だとすると、高設栽培でイチゴの株を越年させて、次の年もイチゴの収穫を行い、これを何年も繰り返すとなると、この方法(工程)を使わざるを得ないのではないかと思います。それ故、高設ベッドにおいてイチゴの株据置栽培方法を実施したいということであれば、権利者に実施の許諾を求めその了解の下に実施しては如何でしょうか。実施料の話もでるでしょうが、相手は一応地方自治体(広島県)ですから、それほど高くはないと思います。何らかの基準があるのではないでしょうか(例えば、広島県内の農家には無償で開放するとか、レッドパール等ある特定の品種については有償だが、他の品種については無償で開放するとか)。
もちろん、高設ベッドにおいてイチゴの株をそのまま据え置いて越年栽培する場合、上記(1)〜(4)の工程を採るよりも、もっと良い方法があるということであれば、話は別です。その方法により、栽培するのは自由です。
 なお、特許発明の特許請求の範囲の解釈は難しいところがありますので、実際に自分で行おうとしている栽培方法が明らかに特許発明とは違うというなら別ですが、はっきりしないということであれば、権利侵害とならないか、弁理士等の専門家に相談することをお勧めします。


 ◆ 参考 ◆ −−−−−−−−−−

特許第3809475号「イチゴの株据置栽培方法」の特許請求の範囲

【請求項1 】
 イチゴの高設ベッド栽培方法において、
栽培体系を慣行の一年方式から多年方式に転換するために、
育苗・定植後、慣行の生育期間を経て初年の収穫を終了した株を、抜き取り処分することなく栽培ベッドに据え置いて次作の生産株として用い、
かつ、窒素肥料の施用を中断する無施用期間を置いて株管理を維持し、花芽分化後、慣行の施用管理を再開して収穫を終了し、次作以降について同一株を多年利用するようにしたイチゴの株据置栽培方法であって、
以下の処理工程を包含する栽培体系を繰り返すことを特徴とするイチゴの株据置栽培方法。
(1) 収穫を終了した株をそのまま栽培ベッドに据え置いて次作の生産株に用いる株据置処理工程。
(2) 据え置いた生産株に対する窒素肥料の施用を断ち、株ごとに芽掻きして芽数を整理し、灌水及びランナー除去を含む株管理を維持して次作の花芽分化を促す窒素施用中断処理工程。
(3) 花芽分化を確認後、株ごとに芽掻きにより芽数を整理して窒素肥料の施用を再開する施肥再開処理工程。
(4) 灌水、施肥を含む慣行育成を経て収穫をおこなう生育・収穫処理工程。

【請求項2 】
 窒素施用中断処理工程及び施肥再開処理工程における芽数が、株ごとに1芽〜数芽に整理するものである請求項1記載のイチゴの株据置栽培方法。
(平成20年11月)
回答者 日本弁理士会
ページ先頭へ
Copyright Japan Agricultural Development And Extension Association. All Rights Reserved.