近年、夏場の高温が水稲の生育や収量、品質に及ぼす影響が大きくなっている。こうした中、安定した収量・品質を確保するためには、圃場ごとの地力や生育状況を的確に把握し、それに応じた施肥や栽培管理を行うことが一層重要となっている。一方、経営規模の拡大に伴い、多数の圃場をきめ細かく管理していくことは容易ではない。
こうした状況を踏まえ、山形県村山総合支庁産業経済部北村山農業技術普及課では今年度、全国農業システム化研究会実証調査事業を活用し、東根市で大規模な水稲経営に取り組む(株)耕成の圃場において、スマート農業技術を組み合わせた栽培管理に取り組んだ。
5月の田植えでは可変施肥田植機を使用し、その後は営農支援システム「KSAS」で圃場情報を管理。さらに、衛星リモートセンシングや「やまがた米づくりナビ」(※)を活用して生育状況を把握し、追肥の要否を判断した。収穫時には、収量・食味メッシュマップ機能付きコンバイン(PFコンバイン)を用いて、圃場内の収量や食味のばらつきを把握。一連のデータを栽培管理に活用することで、収量と品質の安定化につなげることを目指している。
特に今回対象品種とした「つや姫」では、良食味・高品質な米づくりを基本としながら、近年の高温等の影響なども踏まえた収量の確保が課題となっているため、本実証を重点課題として捉え、試験に取り組んでいる。
(※)山形県が提供する水稲の営農支援システム。衛星データなどを活用し、圃場ごとの生育状況や作業適期を見える化する米づくり支援ツール。
9月29日には、東根市の同社圃場で収量・食味メッシュマップ機能付きコンバインによる刈取実演会が開催された。今年度は例年に比べ雨の日が多く、作業への影響もみられたが、実演会当日は天候にも恵まれ、山形県関係機関をはじめ、JA、市町村、生産者、農業機械・資材メーカーなど約30名が参加し、収穫作業や収量・食味データの取得状況を見学した。
初めに、山形県村山総合支庁産業経済部北村山農業技術普及課の工藤普及推進主幹(兼)課長が挨拶し、今回の取組の成果への期待を述べた。続いて、山形県農林水産部農業技術環境課 森谷作物技術主査と山形県村山総合支庁産業経済部北村山農業技術普及課 大江主任専門普及指導員から、試験の概要やこれまでの栽培管理について説明があった。


環境課 森谷作物技術主査

前年のPFコンバインによる収穫データでは、圃場の西側で収量が低く、東側で高い傾向がみられた。5月の田植えでは、このデータを基に圃場内のばらつきに応じた可変施肥を実施。その後、衛星リモートセンシング等で生育状況を確認しながら栽培管理を行ってきた。今回の刈取りでは、こうした取組によって圃場内の収量のばらつきがどのように変化したかが注目点の一つとなった。

一発基肥による栽培のため、当初は追肥を行わない予定であったが、減数分裂期の生育状況や葉色を確認した結果、追肥が必要と判断し、実施したことが説明された。生育状況をデータで可視化することで、圃場の状態に応じた栽培管理の判断につなげられることも、こうした技術を活用する利点の一つである。
農機やシステムについては、クボタアグリサービス(株)仙台事務所の佐藤氏が、実際のKSASの画面を示しながら、システムの仕組みや収量・食味メッシュマップの見方などを説明した。

説明を聞く参加者

その後、刈取圃場へ移動し、PFコンバインによる刈取作業を見学した。今回は5条刈りコンバイン「DR595」を使用。約20aの圃場の刈り取りは30分程度で終了した。
PFコンバインで取得したデータはサーバーを経由してKSASに送られ、管理画面上で確認することができる。通信状況やサーバーの処理状況等にもよるが、刈取りから2~3時間程度で、収量やタンパク値などのデータが反映されるという。
実演会終了後に取得データを確認したところ、10a当たりの収量は昨年の約550kgに対し、今年度は約600kgとなった。また、タンパク値も目標の範囲内に収まっており、品質を確保しながら収量を高めるという今回の取組の狙いに沿った結果となった。
株式会社耕成の石山代表取締役も今回の結果を高く評価しており、収穫時に得られたデータを今後の施肥や栽培管理に生かしながら、さらなる収量向上を目指していく考えを示した。


圃場内の地力のばらつきは、土性や気象条件などにも左右され、短期間で解消できるものではない。前年までの品質を維持しながら、蓄積したデータを基に複数年にわたって施肥量などを調整し、圃場全体の収量を徐々に高めていくことが重要となる。今後も継続してデータを蓄積・活用し、より精度の高い栽培管理につなげていくこととしている。