技術【米】


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省力多収栽培技術
技術名 技術の特徴 開発機関名 ページ
「コシヒカリ」の疎植栽培技術 疎植栽培とは
3.3u当たり60株未満の栽植密度で移植する。ここでは本県の慣行60株よりも低い密度で移植する栽培法をいう。

「コシヒカリ」疎植栽培の生育・収量の特徴
(1) 疎植栽培では、生育期間中の1u当たり茎数は慣行に比べて少なく経過し、収量構成要素は1u当たり穂数が少なくなり、1穂籾数が多くなる。登熟歩合は慣行と同等から高い傾向で、千粒重は変わらない。
(2) 収量は、3.3u当たり50株植えまでは、慣行と同様で安定している。6月移植は栽植密度に関わらず、収量は低下する。
(3) 総籾数が適正範囲内であれば、玄米品質(乳白発生率・タンパク質含有率)は、各移植期とも栽植密度による差はない。

留意点
(1) 疎植栽培の適用地域は、穂数が十分に確保できる平坦地である。
(2) 移植時期が遅くなるに従い、栽植密度が低いほど穂数減による収量低下が懸念される。
石川県農林総合研究センター農業試験場 1
大豆跡水田における水稲多収品種の施肥法  多収品種「あきだわら」や「みつひかり2003」を大豆跡初年目の水田で栽培する場合、基肥を無施用とし、穂肥を慣行どおり施用することにより、700kg/10a以上の多収が得られる。

<留意点>穂肥は水稲の生育に応じて必要量を施用する。本技術は大豆跡の土壌窒素発現が期待できる半湿田〜湿田を対象としており、乾田や低地力田には適用できない。
石川県農林総合研究センター農業試験場 3
あきさかりの良さを引き出す栽培法  本技術は、移植時期や、施肥法等を工夫することによって、「あきさかり」の良さである多収性と良食味、真珠のような光沢を安定的に引き出す栽培法です。
 移植時期は5月中旬〜6月初旬で、栽植密度は、坪あたり60〜70株程度とし、基肥重点の施肥体系で、収量を確保します。
 食味・光沢・品質を高めるために、穂肥は幼穂形成期時の葉色によって施用量を判断します。玄米タンパク質含量は6.0〜6.5%が適正値です。
留意点として、圃場の土壌タイプや、施肥方法を考慮すること。紋枯病の防除の徹底すること。適期収穫を行う(積算気温は1,070℃程度)ことです。
福井県農業試験場 5
良食味米生産のための生育診断技術  当センターでは、京都府産米のますますの食味向上と栽培技術の高位平準化を目的として、京都府産コシヒカリの理想とする生育パターンを明らかにするとともに、u当たり籾数をコントロールすることにより良食味米を生産する生育診断技術を開発した。
(具体的な生育診断技術)
 幼穂形成期の生育量を数値化し、穂肥量を調節することにより、良食味米となるu当たり籾数にコントロールする技術。
京都府農林水産技術センター農林センター 6
水稲移植栽培における「短期苗」育苗法 ・播種量を1箱湿籾250〜280gと一般幼苗(150〜180g/箱)より多くし、段積み後、床広げして黒色不織布を二重に被覆すると、13〜14日で機械移植に可能な草丈とマット形成が得られる。
・播種量が多いため、かき取り量を減ずる等の調整を行うと、10a当たりの必要箱数が幼苗の6割程度となる。
・成熟期が幼苗と比較して2〜3日遅くなるが、収量・品質はほぼ同等である。
佐賀県農業試験研究センター 7
水稲「ミズホチカラ」の多収を得る栽培技術及び立毛乾燥法 水稲「ミズホチカラ」は米粉用品種として平成19年に熊本県の認定品種に採用された。そこで、本品種の多収を得る栽培方法について検討し、移植期及び栽植密度が「ミズホチカラ」の生育及び収量・品質に与える影響を明らかにした。
水稲「ミズホチカラ」の多収を得る移植期は、5月下旬〜6月中旬である。6月下旬以降の移植では、籾数の減少で減収し、成熟期が遅く霜害のリスクを負う。また、多収を得る栽植密度は、18.5株/uである。これより疎植では、穂数が不足し、減収する。密植では、収量に明らかな差が無く、有利性は無い。
さらに、適施肥方法は、a当たり窒素成分で基肥0.5kg−穂肥0.3kg−晩期穂肥0.2kgである。堆肥(10aあたり1〜2トン)の施用により4〜6%の増収効果がある。
また、「ミズホチカラ」の5月下旬移植では、成熟後、約30日で平均籾水分は15%程度に下がる。しかし、高水分の籾が含まれるため、乾燥調整が必要である。
熊本県農業研究センター 8
水稲鉄コーティング直播の苗立ち向上のための耕種的防除技術 水稲鉄コーティング直播栽培における苗立ち不良は,水生生物と苗腐病が主な原因であり,出芽始期から第1葉期まで,約10日間の落水管理で,耕種的に防除できる。 広島県立総合技術研究所農業技術センター 13



その他の技術
技術名 技術の特徴 開発機関名 ページ
環境に配慮した高品質米生産のための陶管暗渠を用いた土壌水管理システムの開発  本土壌水管理システムは、陶管の暗渠管を利用した水田の土壌水分、地下水位等を調整できるシステムである。従来の暗渠本管の上端に立ち上がりを設けることで、地下灌漑、および排水時の大気供給も可能とし迅速な地下排水を可能とした。迅速な地下排水は、暗渠管内の清掃効果もある。暗渠本管の下端は、多機能排水桝を設置し、立ち上がり管を設けた。このことで、水閘の経年劣化による開閉ストレスを軽減した。また、地下水位を目視できるため、地下灌漑時の地下水位設定をしやすくした。なお、多機能排水桝には、田んぼダム用の仕切り板も設置できる。また、本暗渠と補助暗渠をモミガラなどの疎水材で連続させ、粘質土や大区画の水田でも迅速な灌漑と排水をできるようにした。さらに、近年の温暖化対策として、登熟期の地下灌漑による地温制御を実証予定である。 新潟大学 15
イネの特定の遺伝子の発現を抑制する新手法、イネの新しい突然変異体の作出 artificial microRNA(amiRNA)を利用してイネの特定の遺伝子の発現を抑制するシステムを確立している。また、イネ内在性トランスポゾンnDart1-0を変異源とするコシヒカリ系統を利用して、新しい突然変異体を選抜することで、容易に原因となる遺伝子の同定を行うことができる。 石川県立大学 16
コシヒカリ突然変異集団を利用した新品種の選抜 イネの優良食味品種コシヒカリは、主に福島・新潟以南の日本各地で広く栽培されており、石川県でも約80%の作付面積を誇る。その一方で、コシヒカリは倒伏しやすく、いもち病などの病気にも弱いことから、栽培方法の改良や薬剤防除の管理のもとで栽培が行われている。このようなコシヒカリの弱点を克服するため、本研究技術は、遺伝子組み換えでないコシヒカリ突然変異体集団から、新たな有用形質を持ち合わせた新品種を選抜するものである。今回は、そのような有用形質の中で、イネの最重要病害であるいもち病に対して抵抗性を示す系統の選抜を試み、複数候補の単離に成功した。 石川県立大学 17
水稲種子温湯消毒時の耐熱性強化種子処理技術 イネ種子を予め高浸透圧溶液に1日浸漬し、乾燥することにより温湯消毒時の耐熱性を高める技術である。耐熱性強化の程度は、コシヒカリ種子で1.5〜3.0℃である。または60℃の水温を用いる場合は、浸漬時間を5分〜20分間延長することができる。 したがって、本技術により耐熱性を高めたコシヒカリ種子では、現在60℃・10分間で行われている湯温処理を、61.5〜63.0℃・10分間、または60℃・15分〜30分間で行うことが可能である。なお、ハナエチゼン種子は湯温消毒時の耐熱性が低いが、本技術の適用によって、コシヒカリと同程度まで耐熱性を強化できる。 福井県立大学 18
リモートセンシングによる収穫適期の推定 航空機または衛星リモートセンシングを活用し、水稲の収穫適期を広域でほ場ごとに推定できる。画像データの670nm付近(赤の波長)の反射率を利用して、収穫前に適期を暦日で推定し、ほ場単位でマップ化する。/ (地独)青森県産業技術センター 19
大豆子実用高周波容量式水分計によるコンバイン収穫後稲わら水分の簡易推定 大豆子実用高周波容量式水分計の読み値から、稲わら水分を簡易に推定できる方法を開発した。本推定法は稲わらの細断と電池式の水分計によるため、圃場の稲わらから迅速に多点数の水分を推定できることが特徴である。具体的には、測定する稲わらは10〜15mmの均一な長さに細断し、混和する。細断した稲わらを大豆子実水分測定方法に準じて、付属の計量カップで計量し、大豆子実用高周波容量式水分計(本試験では商品名:K社製ダイザーを使用した)を用いて測定する。測定は3回程度繰り返し行い、その読み値(表示値)の平均値を測定値とする。この測定値は、稲わら水分の実測値(105℃、乾熱法)との相関が高いことから、事前に測定値と稲わら水分の検量線を作成しておくことで、簡易推定が可能になる。  秋田県農業試験場 21
水稲におけるゼオライトとカリ資材の放射性セシウム吸収抑制技術 細粒グライ土壌において、放射性物質の吸収抑制効果を各種資材を用いて明らかにした。
結果は以下のとおりである。

1 ゼオライトは土壌中の交換性カリ含量を増加させ、玄米中の放射性セシウム吸収抑制効果が認められた。
2 ゼオライトとケイ酸カリの併用では、玄米の放射性セシウム吸収抑制効果は高かった。
3 塩化カリは、ケイ酸カリに比較して交換性カリ含量の上昇が速いため、放射性セシウム吸収抑制効果は高かった。
4 収穫時の土壌中の交換性カリ含量と玄米中の放射性セシウム濃度には、高い相関が認められた。
福島県農業総合センター 22
水稲有機栽培の栽植密度がコナギ生育と水稲収量に及ぼす影響 1 分げつ期間は水稲の生育量に応じて田面が遮蔽されていく。コナギの乾物重は平均相対光量子量と正の相関関係が認められる。密植により平均相対光量子量が低下するとコナギの乾物重も低下する。
2 幼穂形成始期におけるコナギ乾物重と成熟期のコナギさく果数は、株間を狭め栽植密度が密になるほど減少する。
3 株間を狭め栽植密度が密になるほど、穂数、平方メートル当たり籾数が確保され収量は向上する。
4 株間が広くなるほどコナギが多発生し雑草害により減収する。しかし、株間を狭めて水稲の田面遮蔽による抑草効果が得られればコナギによる雑草害は軽減される。コナギ抑草の耕種的方法として株間を狭めた栽培は有効である。
福島県農業総合センター 25
米乳酸発酵飲食品及びその製造方法  米に麹、水を加え糖化した甘酒、もしくは米に乳酸菌が利用できる糖類、水を加え、米発酵に適した乳酸菌であるLactobacillus sp.FPL1(NITE P−691)、該乳酸菌含有物、その処理物の少なくともひとつを含有してなること、を特徴とする飲食品。 福井県農業試験場 29
アミロース含量を指標とした米パン硬化抑制  低アミロース米粉を使った米パンは焼成後3日で高アミロース米粉を使用した米パンと比べて硬くなり難いことが分かった。アミロース含量が米パンの膨らみに大きな影響を及ぼし、高くなると膨らみが大きくなる。一方、アミロース含量が5%以下であると形状の保持が困難になる。
 米パンの膨らみと硬化抑制のバランスを考慮すると、アミロース含量を概ね8〜10%にすることで膨らみを保つことができ、かつ硬化抑制効果がある。
福井県農業試験場 30
積雪前の除草剤散布による斑点米発生防止技術  積雪前の秋から冬にかけて、DBNを成分とする除草剤をカメムシ類の越冬場所である、水田周辺雑草地に散布し、イネ科雑草を枯死または殺種作用により翌春の雑草の発生を抑制する。
 DBN剤によるイネ科雑草の枯死により、カメムシ類の越冬後の初域にダメージを与え、越冬世代以後の発生量を低下化させる。
 DBN剤の散布時期が、秋から冬にかけての農閑期になるため、融雪後から田植え時期の除草作業が軽減され、労力の分散が可能である。
 広域的にDBN剤を散布することによって、地域全体のカメムシ類の生息密度が低下し、生育期間中の殺虫剤散布を主とした慣行防除に比べ、斑点米の発生抑制効果は高い。
福井県農業試験場 31
梅調味廃液を利用した水田雑草管理 和歌山県内で調味梅干製造に使用された後の梅調味廃液は年間18,000トン発生し、内10,000トンが産業廃棄物として廃棄処分されているが、主要成分として糖分20%程度、塩分8%程度、クエン酸3%程度を含んでいる。
この梅調味廃液を水田に施用すると田面の酸化還元電位が低下し、水田雑草の発生を抑制することが可能である。
本技術では、田植え直後と田植え後7〜10日の2回、水田に梅調味廃液300L/10aを施用することで、水田雑草の発生を70%程度抑制することができる。
和歌山県農業試験場 32
水稲を加害するスクミリンゴガイ発生量の予測法 冬季の気温からスクミリンゴガイの発生量と水稲の被害発生圃場率を予測技術を開発した。 岡山県農林水産総合センター農業研究所 33
普通期水稲と小麦に有効なリン酸・カリの減肥栽培 土地利用型作物の栽培では近年の肥料価格の高騰に対応して省資源的で低コストの施肥技術が求められている。そこで普通期水稲と小麦の栽培体系において土壌診断に基づきリン酸肥料と加里肥料を大幅に削減出来る施肥技術を確立した。土壌中の有効態リン酸が1mg/100g乾土以上で交換性カリウムが20mg/100g乾土以上の土壌ではリン酸及びカリウムの減肥栽培をを3年間継続しても収量、品質は維持される。減肥栽培によるリン酸及び加里の養分収支は水稲、小麦のいずれもわらをほ場外へ持ち出した場合はマイナスとなるが土壌中の有効態リン酸及び交換性カリウム含量は標準栽培と比較して明らかな減少傾向は見られない。 熊本県農業研究センター生産環境研究所 34
水田のケイ酸供給能に基づく水稲に対するケイ酸質資材施用の要否判定 水稲はケイ酸を多量に吸収する作物である。吸収されたケイ酸は茎葉の構造性強化を通して病害虫抵抗性を向上させ、また稲体の受光態勢改善により玄米の収量及び品質の向上に寄与している。このため、水稲栽培ではケイ酸の供給能を高めるためケイ酸質資材の施用が推奨されている。ところが県内にはケイ酸質資材の施用効果が認められる地域とそうでない地域が存在することがわかってきた。この要因を探るため地帯別にケイ酸の天然供給量を調査するとともに栽培試験によりケイ酸質資材の施用効果を調べた。ケイ酸の天然供給量は灌漑水と土壌に由来し、河川の水系と土壌の種類によりケイ酸供給能を区分することができる。土壌中の可給態ケイ酸が15mg/100g乾土以下の非黒ボク土壌で灌漑水のケイ酸濃度が低い場合はケイ酸質資材による増収効果が認められるが可給態ケイ酸が15mg/100g乾土以上で灌漑水のケイ酸濃度が高い場合はケイ酸質資材による増収効果は認められず、ケイ酸質資材の施用は不必要となる。 熊本県農業研究センター生産環境研究所 37
水稲育苗箱全量施肥栽培の苗質は水田苗床育苗の場合に遮根処理で改善する ・床土と苗箱の間にシートを敷く等の遮根処理(根域制限)を行うと、苗床の水田土壌から養分吸収が制限されるため、遮根処理しない場合に比べて移植時の苗丈は4〜6p程度短くなり徒長が抑制される。
・遮根を行わない場合は苗床の土壌まで根が伸張するのに対し、遮根処理により根は苗箱内にとどまって巻くため、マット形成は充実する。
・遮根処理を行うと苗床に根が張らないため、移植時に苗床から苗箱を剥ぎ取る作業が
極めて軽労働化され、その後の苗箱下面に残る余分な根を削り取る作業も不要となる。
熊本県農業研究センター生産環境研究所 40
多収米の収量確保にはトビイロウンカの防除が欠かせない ・適期(6月上旬〜中旬)に移植した多収米は、トビイロウンカの被害を受けやすく、収量を確保するためには防除が必要である。
・防除は、適切な農薬の育苗箱施薬と本田での適期防除の効果が高い。なお、本田での適期防除は、病害虫防除所から発表される本種の発生時期予測を考慮して行う。
熊本県農業研究センター生産環境研究所 41
湿田での水稲栽培における堆肥利用による化学肥料節減技術 湿田での水稲栽培では,牛糞および鶏糞堆肥を基肥として入れることで,化学肥料の使用量を減らすことができることを5年間の連用試験で明らかにした。 広島県立総合技術研究所農業技術センター 42
乾田での酒米栽培における堆肥利用による化学肥料節減技術 乾田での酒米栽培では,牛糞および鶏糞堆肥を基肥として入れることで,化学肥料の使用量を減らすことができることを5年間の連用試験で明らかにした。 広島県立総合技術研究所農業技術センター 44
ほ場で直接液肥が作れる水稲用流し込み施肥装置 水稲の省力的な施肥法として,安価な固形肥料を使用し,ほ場で液肥の製造と同時に水口から施肥できる流し込み施肥装置(以下,試作機とする)を試作。その特徴は、@一般的に入手できる安価な尿素等の粒状肥料を用い、圃場で直接流し込むための液肥が作れること、A装置から圃場へ滴下する流量の調節が可能で、一度調節した滴下流量は長時間経過してもほぼ一定であること。
現地圃場で実施した実証試験結果では、流入施肥区(試作機による尿素流し込み施肥区)と対照区(背負式動力散布機による硫安追肥区)との比較で,坪刈収量,玄米タンパク質含量および整粒歩合が同等であった。
茨城県農業総合センター農業研究所・(有)横田農場 46